種色
今現在の姿が全てである。
「過去の栄光」なんて素敵な言葉があるけど、そんな時期はなかったよなぁ。
失った時間と持ち続けている時間とがそれぞれにあって、お互いを相殺しながら思い出を美化し合っている。
そんな歴史しかない。
真実は過去のもので、瞬間を無駄にした時間は今が「そんな時もあったねぇ」と言ってくれている。
後悔の種をうまく利用しなきゃ無駄なんだ。
『なかった事』には出来ない性質なんでね。
黒歴史なんてかっこいい響きのものではない。
ただ薄い歴史で語るに足らずな時代だっただけなんだ。
それがそのままコンプレックスになって感動に執着してしまう。
他人の過去を愛せないのが普通なのかもしれないな。
実はこのズレが居心地良い場所なんだけどね。
『さよなら』が好きだったり、『孤独』を認めたがったり、『端』にいたがったり……。
理由はなんだと考えてみた。
その反対側に居た自分が気に食わなかっただけの話。
「端っこ好き」な理由はあるひとつの出来事に由来するんだ。
それは次の機会にでも書こう。
誤解と裏切りで失ってしまう過ぎた時間。
残念ながら受け入れる器がなかったんだろう。
「どちらに?」なんてのはこの際どうでもいい。
忘れてしまう脳機能も持ち合わせている我々は、新たな道を探し求める種族なのである。
微かな思い出と記憶を『なかった事』にはしないでおきたい。
いつでもその色に染まれる状態でありたい。
30年ちょっとの人生だけど、染まれない過去の色が沢山ある。
一度きりだから染め直しはできないか。
色探しがこれからの楽しみなのかもしれない。
自分探しじゃなくてね、色探し。
染まれなくても色を味わえるってとこを。
後悔の種に光と水と大地を与えて芽吹かせる為に。
袋に溜めてた種を蒔く時がくるその日まで。