恋する者の心の形
数ヶ月前から付き合いだした二人がいた。
付き合いだす前とそう態度に変わりはなく、自然体で付き合っているんだなといった印象。
友人達と数時間わいわいと酒を飲んで解散し店を出る。
彼氏が彼女へ接する態度に冷たさなどはなかったが、酒が入り感情的になった彼女は寂しさを悲しみへ、そして怒りへと変えていってしまった。
彼女はフランクな人間。
異性に対する接し方は少し距離が近い。
彼氏がそこに機嫌を損ねてる様子はないが、本音はどうだかわからない。
多少なりにも態度に表れていたのかもしれない。
店を出てからの二人は何を言い合ったのだろう……。
彼女は泣きながら独り歩き出す。
忘れ物を友人が彼氏へ届けるまで立ち尽くしていた。
『何が悪かったのだろう。怒らせるような事を言ったのだろうか?』
ほんの少しのきっかけになった忘れ物。
それを受け取り彼女を追いかけて引き留める。
冷たい風が吹く中での数秒間、気持ちに取っ掛かりが出来ていた様だ。
二人は抱き合いながら感情を落ち着かせていった。
憔悴した表情と安堵の表情がそれぞれの顔にあった。
めでたしめでたしである。
それを駅の自動販売機の陰で見守っていた友人は、二人の始終を目の当たりにして心の温まりを感じていた。
夜道は寒かったが、人恋しさを胸に街道へ消えていくのである。