外へ……。
一人旅や放蕩生活をしていた時期があったんだと思う。
今から10年前かな……、暮らしに息詰まりを感じて仕事を辞めた。
海外に行く根性も命を危険にさらす徹底度もなく、緩やかな一人旅。
住み込みで働きながら酒と女を味わった。
ほんのちょっとの捨て身の行動は良い結果をもたらしていたと思う。
出会いも多く、色んな人と接した。
友情もあり愛情もあり、金だけがそんなに無かった。
パチンコだけはハマらなかったかな。
それはそれで楽しかった。
今では酒の肴になる昔話となっている。
30を過ぎ、周りではそんな生活を羨む声が多くなった。
『若い時にしか出来ない』
『家庭を持ったら出来ない』
『もうこの歳では出来ない』
そんな事はないのだけれど、たしかに若い時の方がいい気はする。
理由はただ「絵になる」からだけど……。
友と酒を喰らい、色気を感じた女を抱き、なんとなく先はあると思って生きていた。
実際何にもない。
気持ちの赴くままに今を楽しんでいただけだった。
まぁ、それで良かった。
誰かに会いに行く一人旅。
飛行機、新幹線、バスにフェリー。
今では数時間で行けちゃう時代だ。
時間をかけてゆっくりと回り道して会いに行く。
目的までの空白はそのままで旅に出る。
感動を拾いつつ辿り着く。
期間が長かろうが短かろうが、宝物を拾う回り道が出来たら上々。
それが良い一人旅。